• 雛人形の人形や道具にはどんな名前や意味があるの?

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    女の子が生まれると用意する「雛人形」。みなさんは雛人形の人形や道具にはどんな名前や意味があるかご存知ですか?雛人形にはひとつひとつに意味があります。今回は雛人形について詳しく解説していきます。

    雛人形とは?

    三月三日の桃の節句である「雛祭り」に飾る「雛人形」。この雛人形には由来や意味がちゃんとあります。まずは雛人形について解説していきます。

    桃の節句

    桃の節句、雛祭りは、生まれてきた女の子が健やかな成長をしたことを祝い、今後も健やかに成長して健康であることを願う伝統的な行事です。上巳(じょうみ)の節句と言うのが、正式な呼び名です。 雛祭りの起源は、古代中国だといわれています。古代中国では「上巳の節句」に川で体を清め、災厄を祓う風習があり、この風習が日本に伝わりました。

    雛祭りのもとになった行事といわれている「雛流し」の由来であるともいわれています。「雛流し」とは、「人形(ひとがた)」や「形代(かたしろ)」と呼ばれる紙で作った人形に厄を移して身代わりとして川に流すことで厄除けをする行事でした。

    雛人形

    雛人形の由来は、雛流しの「人形(ひとがた)」と、お人形遊びである「ひいな遊び」です。平安時代には、人形に着物を着せたり、いろいろな調度を整えたり飾ったりする女の子の遊びを「ひいな遊び」と呼んでいました。雛人形は天皇陛下の結婚式の場面を表現したものです。

    女の子の代わりに雛人形が厄を引き受けて、女の子が健やかに成長できるように想いが込められている他、将来幸せな結婚ができるようにと願いを込めたものでもあります。

    雛人形の種類

    雛人形と聞くと大きくてたくさんのお人形とお道具が並んでいるイメージがあると思いますが、実は雛人形には様々な種類があります。ご家庭の飾る場所に合わせて、選ぶことができます。ここでは雛人形の種類について解説します。

    親王飾り

    親王飾りは、雛人形のうち天皇を模した「殿」と、皇后を模した「姫」の男女一対の内裏雛だけで構成されるものです。一般的に内裏雛を中心にして「屏風(びょうぶ)」「雪洞(ぼんぼり)」「三方菱台(さんぽうひしだい)」「桜橘」を飾ります。省スペースで飾ることができるので、雛人形を飾りたいけど飾るスペースが限られている場合におすすめです。

    五人飾り

    親王である2人に加え、宮廷の女官である「三人官女」を加えた五人が基本となります。二段のものと三段のものがあります。一番上に親王の二人が配置され、その下の段に三人官女が配置されます。また、三段飾りの場合は一番下の段に嫁入り道具の、重箱、牛車、お籠が配置され、飾り段が3段となるものが多いです。親王飾りに比べると豪華で飾りがいがあります。七段飾りを置くスペースはないけど、親王飾りだとちょっと寂しい感じがする方におすすめです。

    十人飾り

    親王と三人官女に加え、音楽を奏でる「五人囃子」を加えた十人の雛人形です。三段のものと四段のものがあります。三段では一番上に親王、二段目に三人官女、三段目に五人囃子となります。四段では一番下の段に嫁入り道具が配置されます。人数が増えて並べがいもあります。

    十五人飾り

    親王、三人官女、五人囃子に加え、宮廷の武官である随身(ずいじん)の二人「右大臣」「左大臣」、天皇の従者である「仕丁(しちょう」)を加えた十五人の雛飾りです。十五人飾りは最も人数が多い雛飾りです。十五人飾りには七段飾りと五段飾りがあります。五段飾りの場合は十五人を並べ、七段飾りの場合にはその下に二段を使って嫁入り道具が並べられます。スペースも取る雛人形ですが、全部揃った雛人形は豪華で飾りがいがあります。

    それぞれの人形の名前と役割

    天皇陛下の結婚式を模したものである雛人形たちにはそれぞれ名前と役割があります。ここからはそれぞれの人形について詳しく解説していきます。

    一段目:親王

    雛人形親王

    親王とは天皇と皇后の男女が対になっている人形のことです。 親王は別名、「内裏雛(だいりびな)」と呼ばれることもあります。天皇である殿のことを「お内裏様(おだいりさま)」、皇后である姫のことを「お雛様(おひなさま)」と男女を分けて呼ぶこともあります。

    お内裏様は平安時代の正装である束帯(そくたい)を着ています。そして右手には細長い板である笏(しゃく)を持っています。笏の裏側には、笏紙(しゃくし)という紙に大切なことを記して貼って、忘れたときの備えとしていたと言われています。

    お雛様は礼装の際に持つ、木の板を紐でつないで飾り紐をつけた、桧扇(ひおうぎ)を持っています。宮中行事の作法などをメモするために用いられたともいわれますが、平安時代には身分の高い女性にとって顔を見られることは、あまり良くないことだったため、お顔を隠す意味もありました。

    親王の人形には、夫婦の理想像である天皇と皇后のように、良縁に巡り会えますようにと祈りが込められています。

    二段目:三人官女

    三人官女

    三人官女とは天皇皇后であるお内裏様、お雛様の身の回りのお世話をする宮仕えの女性の役人たちを模した人形のことです。宮廷行事や節会には給仕につくことがありました。三人官女は一般的に、祝杯をあげるための道具である、加えの銚子(くわえのちょうし)、三方(さんぽう)、長柄銚子(ながえのちょうし)を手に持っています。

    加えの銚子(くわえのちょうし)・・・鍋に似た形の金属製の器のことをいいます。銚子の一種でかつては宴席で酒を注ぎ勧めるのに使用されていました。

    三方(さんぽう)・・・盃を乗せる台のことをいいます。三人官女が持つ三種類の道具の中で最も格式高いものであり、最も年上でリーダー格の女官が持つことが多いです。

    長柄銚子(ながえのちょうし)・・・盃に酒を注ぐ酒器で銚子の一種です。

    三段目:五人囃子

    五人囃子

    五人囃子とは、能楽を奏でる五人組の楽団の人形のことです。天皇陛下の結婚式で華やかな楽しい雰囲気を作っています。五人囃子は十一歳から十六歳の元服前の子どもたちで編成されているため、みんなおかっぱの髪型をしています。

    五人囃子の持つ楽器は「太鼓(たいこ)」、「大鼓(おおつづみ)」、「小鼓(こつづみ)」、「笛(ふえ)」、「謡(うたい)」です。謡とは声楽の担当のことをいい、扇を持ち芸を披露していました。

    四段目:随臣=右大臣と左大臣

    右大臣と左大臣

    随臣(ずいじん)とは、宮廷を警護する武官のことをいいます。お内裏様とお雛様をお守りするボディガードのような役割を持っています。向かって左に配置する若い方が右大臣、向かって右に配置する長いひげを持つ老人が左大臣です。若者はお内裏様側の護衛で、老人はお雛様側の護衛です。お雛様の近くには、若者の男を置かないという配慮があります。

    頭には巻纓冠(けんえいかん)と呼ばれる警護の任務の際にかぶる帽子をかぶります。左手には礼装の武官束帯で持つために装飾の施された美しい「儀仗の弓(ぎじょうのゆみ)」を持ち、右手には鷲・鷹など鳥の尾羽を使用して作られたとされる矢を持っています。左脇には儀式に用いる装飾的で形式化した「儀仗の剣(ぎじょうのけん)」という刀を携えています。

    五段目:仕丁

    仕丁

    仕丁(してい)とは、御所の掃除をしたり、お内裏様が外出するときに色々な雑務をこなす従者のことをいいます。そのために必要な道具を持っています。

    台笠(だいがさ)・・・日光を遮る日傘のことです。

    沓台(くつだい)・・・靴を置く台のことです。

    立傘(たてかさ)・・・雨よけの傘のことです。

    京風飾りの場合は御所をお掃除するために必要な道具である熊手(くまで)、ちりとり、ほうきを持っています。 仕丁は庶民出身であり、人間の三代感情である「笑い」、「泣き」、「怒り」が描かれていて、別名「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれています。これには、女の子が表情豊かに育ちますように、という願いがこめられています。

    ​​六段目:嫁入り道具

    六段目には雛道具が置かれます。これらの雛道具は婚礼道具をモデルとしていて、嫁入り道具とも呼ばれます。お雛様がお内裏様に嫁いだあとの生活に困らないための道具です。

    箪笥(たんす)・・・お雛様の優雅な生活を象徴するかのような豪華な箪笥です。平安時代には箪笥を持つことができたのは上流階級の人だけでした。

    挟箱(はさみばこ)・・・外出するときに衣類等を収納する箱です。

    長持(ながもち)・・・衣類や寝具を入れるための長方形の箱です。

    鏡台(きょうだい)・・・衣類や寝具を入れるための長方形の箱です。

    針箱(はりばこ)・・・裁縫道具が入った箱です。すべてが手作りだった平安時代にはお針箱は必需品でした。

    火鉢(ひばち)・・・中に灰を入れ、暖房のように使う道具です。

    茶道具(ちゃどうぐ)・・・お茶を入れる道具です。当時茶道は武家の女の子にとってたしなみのようなものでした。

    ​​七段目:御輿入れ道具(おこしいれどうぐ)

    七段目には御輿入れ道具が並びます。

    御駕籠(おかご)・・・人を運ぶ乗り物のことです。籠の部分を一本の棒に吊し、複数人で棒を前後から担いで運ぶ乗り物です。

    重箱(じゅうばこ)・・・お祝いのごちそうが入っている重箱です。狩りやお花見などに出かけるときに使われていたようです。

    御所車(ごしょぐるま)・・・牛に引かせる乗り物。移動のための機能性よりも、使用者の権威を示す傾向があり、その趣向・風情で身分・家柄もある程度表したそうです。

    その他の道具の名前と意味

    雛人形

    緋毛氈(ひもうせん)

    緋毛氈とは、雛人形の下に敷かれている赤い布のことをいいます。寺院や神社で絨毯代わりに敷かれる事があり、結婚式にも使用していました。赤色には魔除けの効果があるとされていて、女の子が健康的に育つようにという願いが込められています。

    屏風(びょうぶ)

    屏風は親王の後ろに飾られるものです。六つ折りになっているものが多い理由は、「仲むつまじく」という語呂合わせからきています。美しい模様や日本ならではの風景や柄等が描かれた物も多く雛人形の華やかさを演出してくれます。

    玉台(たまだい )

    玉台は親王台とも呼ばれ、お内裏様とお雛様が座る台のことです。一般的には畳が乗っていますが、雛人形のテイストに合わせて最近では木製のものや色がついたものなど様々なものがあります。

    雪洞(ぼんぼり)

    雪洞は火を灯す部分を木や竹の枠に和紙を張っておおっている小型の照明道具です。火のまわりを覆うことで火の持ちをよくしていました。

    燭台(しょくだい)

    燭台とはろうそくを立てる台のことをいいます。火を灯す部分に紙を巻いて風除けをしているものもあります。

    雛人形

    桜・橘(さくら・たちばな)

    植物の一種です。桜は魔よけや邪気払いの効果があると考えられています。また、橘は冬に花が咲くことから、不老長寿の木として崇められていました。こちらも厄除けをすることで女の子が健康に育つようにという願いが込められています。

    菱餅(ひしもち)

    菱餅とは、赤・白・緑を重ねた和菓子のことをいいます。菱餅に使われている色にはそれぞれ意味があります。赤色は魔除け、緑色は健康、白は清浄を意味しています。そのため菱餅には女の子の「魔を払い」「健康で」「清らかに」育つようにという願いが込められています。

    御膳(ごぜん)

    御膳とは高級品の型であるお膳のことをいいます。黒漆金蒔絵の装飾が施され、見た目もとても華やかです。

    雛人形の並べ方についてはこちら▽

    まとめ

    今回は雛人形の人形とお道具の名前と意味について解説しました。雛人形には女の子が健やかに育ち、将来しあわせに暮らせますようにという願いがたくさんつまったものです。ご家庭のスペースに合わせた雛人形で女の子のしあわせな成長を祈っていきたいですね。